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015 弁護士の怒りの葡萄

更新日:2019年2月25日


 「怒りの葡萄」は、アメリカの文豪スタインベックが描いた、1930年代アメリカのオクラホマ州の農民たちの物語です。この時代のオクラホマ州の農民たちは、農業の機械化の波に飲み込まれ、次々と仕事や畑を失ってしまっていました。

主人公であるトム・ジョードの一家も、そのような流民農家の一つです。ジョード一家は、わずかばかりの求人広告が載ったチラシ一枚を頼りに、「太陽と果実の地」カリフォルニア州に旅立つため、一家全員で一台のトラックに乗り込みます。

 ところが、道中のキャンプ地などで、徐々に異変に気が付き始めます。そこには、ジョード一家と同じ「求人チラシ」を持ったオクラホマ州民たちが大量にいて、その誰もがカリフォルニア州を目指しているようなのです…。不審な気持ちを抱きつつも、ジョード一家はカリフォルニア州に辿り着きます。しかし、案の定、大量のオクラホマ州民たちが流れ着いていたため、労働力はすでに飽和状態にあり、仕事口など全く見当たらないのでした。それどころか、オクラホマ州民は「オーキー」などという差別用語で呼ばれている有様です。かくして、カリフォルニアの肥沃な大地には、「怒りの葡萄」が咲くことになります…。

 ここで無理矢理、法律の話をねじり込みます。一般的に、従業員の引抜き行為、すなわち「ヘッドハンティング」は、度を越してしまうと違法となります。ただし、この「度を越してしまう」というのは相当に極端な場合であるため、引抜き行為が違法となる場合はかなり限られます。

それも考えてみれば、もっともなことなのです。例えば、従業員が最終的に本人の意思で会社を移っていったのであれば、それを尊重すべきです。そこに何らかの引抜き行為が関わっていたとしても、その引抜き行為を違法とすべきではありません。「怒りの葡萄」の例を見ればわかるように、労働者は歴史的に苦しい立場に置かれてきたのであり、したがって、労働者がより良い労働環境を求めるのは、ある意味当然のことだからです…。

 このように、怒りの葡萄の精神は、現代日本の法律にも脈々と受け継がれているのです!…などと言いつつ、これではあまりに無茶なこじつけであり、何やら独りよがりの誇大妄想のようでもありますが、大目に見ていただければと思います。。



ー弁護士の徒然草ー

 この物語には、実に美味そうなウイスキーの描写が登場します。主人公トム・ジョードは、荒れ地の中の木陰に腰を下ろし、なけなしのお金で買ったウイスキーの小瓶に直接口をつけ、「出来るだけ余さず味わうために、一口一口、口全体にゆっくり沁み込ませるように大切に飲んでいく」のです。

 私もウイスキーを飲んでいると、一定確率でこの場面が頭に浮かんできます。そして、トム・ジョードのように、ゆっくりと口全体で味わうのです…。…そんなことを考えながら一人で酒を飲んでる様子は我ながらほとんど阿呆のようですが、無害ですので、そっとしておいていただければと思います。

弁護士 佐山洸二郎

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