C・ブロンテの代表作「ジェーン・エア」は、19世紀イギリスの、ある女性の生涯を描いた作品です。その主人公ジェーン・エアは、偏屈ながら、賢く芯の強い女性です。恵まれない幼少時代や、男性優位社会をものともせず、自らの頭を使うことにより自立した人生を送っていきます。賢く芯の強いところにももちろん憧れます。しかしさらに「偏屈」である、すなわちひねくれ者であり、あまのじゃくな部分もある、というところに妙にリアリティがあり惹かれます。
本作にも、一瞬だけ弁護士が登場します。というより「弁護士の名義」だけが登場します。。そこを足掛かりとして、前回同様「文書偽造罪」のお話をさせていただきたいと思います。
ジェーン・エアには、物語の終盤において突然巨額の遺産相続話が舞い降りてきます。そして、それを知らせる手紙の差出人名義は弁護士のものとなっています。自分が多額の遺産相続人であることを突然知らせる手紙って、いかにも胡散臭いです。現代でも、いかにもそういう内容の迷惑メールがありそうです。しかし、このジェーン・エアの話のように、実在の弁護士の名義が表示されているとなんとなく信用できそうな気もしてしまいますね。
この「弁護士名義」を偽ったとしても、文書偽造罪が成立する場合と成立しない場合があるようです。
有名な判例に「実在の弁護士と同姓同名の者が、「弁護士○○」という名義を使って請求書等を作成する場合には、文書偽造罪が成立する。」というものがあります。これを許してしまうと文書を受け取る方は何を信用していいかがわからなくなってしまうし、実在の弁護士の方にも多大な迷惑をかけてしまうからです。
一方で「ホテル宿泊の際に単に見栄を張る目的で弁護士名義を使用した場合」には文書偽造罪は成立しないことが多いようです。本人の自己満足に終わるだけで、他には何らの影響も発生しないからでしょう。「弁護士なんて山ほどいる。弁護士名義を使用したところで、かっこよくもないし、偉そうにも見えないだろう。そんなことをする阿呆はいない。」と言われてしまえば、それまでのような気もしますが。。
ところで、巨額の遺産相続話を持ち掛けてきた人間が「無職男性(26歳)」だったとしたら、明らかに信用できないでしょうね。やはり弁護士名義には一定の社会的信用性がありそうです。なお私も、一昨年あたりは「無職男性(26歳)」の時期がありました。幸いなことに職質されることはなく乗り切ることができましたが。。
ー弁護士の徒然草ー
「弁護士道中膝栗毛」を始めてから数か月が経ちましたが、最初はほぼ0人だった読者数も、今では数人にまで上昇しているようです!…たった数人といえども、継続的に読んでくれる人がいるというのは有り難いものです。薄暗い部屋で、ひとりニヤニヤしながらアクセスカウンターを眺めています……。というのは冗談ですが、今後ともよろしくお願い致します!
弁護士 佐山洸二郎
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