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001 夢の世界と論理の世界

更新日:2019年2月25日


 三島由紀夫と言えば、言わずと知れた近代日本文学の超重要作家の一人でありますが、もともとは東京大学法学部卒の法科のエリートなのであります。したがって彼の作品には、法学と文学が交錯するような場面が多々登場致します。その中でも特に法学と文学が入り混じる作品として「豊饒の海 4部作」を題材に弁護士を観察してみたいと思います。

 この「豊饒の海 4部作」の主人公達は、仏教にいう輪廻転生、俗に言う「生まれ変わり」をしていきます。そしてそれらを傍らで見ていく準主人公が、元裁判官であり現弁護士の義理堅い人物であるという構成になっています。ここから見えてくるのは、輪廻転生といういわば「夢・幻想」の世界と、法律の世界という「現実・論理」の世界との対比です。この準主人公も、自ら元裁判官の弁護士として、現実や論理の代表としての立場にいることを自覚しています。しかし輪廻転生していく主人公達を見ているうちにその精神的地盤が揺らいでいき、最終的には夢だか現実だかわからない「空」という地点に到達することにより物語の幕が閉じます。

 このように、法律や弁護士が文学の中で登場する場合には、「現実・論理」の代表として扱われる場合が多いのです。何だか、弁護士は夢も感情もない無機質な者として見られているのではないかという若干の寂しさも感じますが…。

 でも、皆さまは安心してください。もし自分が弁護士に仕事を依頼する立場になったとして、その弁護士が夢見がちな人間であったとしたらどうでしょうか…。現実の事件そっちのけで夢想の世界に旅立たれてしまっては、依頼者としてたまったものではないでしょう。しかし、上で述べたように、弁護士は「現実・論理」の代表なのです。だから、弁護士に依頼すれば、変に想像の世界になど旅立つことなく、着実に目の前の事件を解決してくれるはずなのです!

 結局何が言いたいのかというと…。皆さん、困ったことがあれば弁護士に相談しましょう。鍛えられた論理の力で必ずや現実的解決への道へと導いてくれるでしょう(ただの営業トークじゃないかというお叱りは免れ得ないかもしれません)。



 ―弁護士の徒然草―

 主に文学の中の弁護士等を紹介していくことによって、弁護士ひいては法学の新鮮な一面を知っていただければと思い、この「弁護士道中膝栗毛」を始めました。タイトルはもちろん、十返舎一九の「東海道中膝栗毛」からの拝借です。「膝栗毛」とは「徒歩による旅行」を意味するようです。

 私もそれにあやかり、のんびりと周りの風景も楽しめる散歩のように弁護士道中を進み、我々が普段考えないような目線から弁護士や法学を紹介していければと考えておりますので、皆さまどうぞよろしくお願い致します。

弁護士 佐山洸二郎

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