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■ 「備品持ち帰り」についての線引きは?


 このところよく聞かれる質問に「ホテル・旅館の備品の持ち帰りは、どこまでが許されているのか?」というテーマがあります。
 の点ですが、長年「お客様は神様である」といった従来型
の価値観により、多少の備品の持ち帰りなら法的な責任追及をしてこなかったというホテル・旅館が多いと思います。
 ただ、その「お客様は神様である」という価値観が「
お客様はお客様である(対等な取引相手である)」という形に変化してきた中で生じてきた問題点の一つだと思います。
 法的に分析すると、「ホテル・旅館の備品は、許可が無い限り、持ち帰りは禁止である」というのが原則であり、出発点となります。
 ホテル・旅館内の備品は、全て「ホテル・旅館が所有・管理しているもの」だからです。
 そうは言っても、現実問題として「
使い捨ての物」や「一回使い切りの物」、例えば使い捨て歯ブラシや使い捨てシャンプーなどは、「使って消費して良いですよ」というものなので、持って帰っても良いというルールにしてるホテル・旅館も多いと思います。
 色々な考え方があると思いますが、法的には、持ち帰り禁止という「原則」を、ホテル・旅館側が「例外的に許可」しているという構造になると思います。
 現実的に問題になるのは、使い捨てや一回使い切りの物ではなく、
ドライヤー、電気ケトルや浴衣、さらにはテレビ(!)などですね。
 これらの物を持ち帰って良いとしているホテル・旅館はまず無いと思います。
 その場合、持って帰ってしまった人には「刑法上の窃盗罪」「民法上の返還義務や損害賠償責任」が発生します。
 何をどこまで厳格に請求するかはホテル・旅館の皆様の経営判断という形になりますが、その前提の法的根拠は、以上のように整理出来ると思います。

―弁護士より一言―

 この「備品持ち帰り」というテーマについて、先日取材を受けた記事がヤフートップニュースに出たり、それを見た各報道機関から取材の問い合わせが来てテレビに出してもらったりで、この問題に関する世の中の関心の深さを再認識しました。
 全てのケースに妥当する明確な線引きをするとことがなかなか難しい問題で、最終的にはホテル・旅館側の作ったルール次第という形になります。

 皆様のホテル・旅館はどうでしょうか?

                 (2023/6/2 弁護士佐山洸二郎)

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