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013 浦島弁護士太郎

更新日:2019年2月25日


 浦島太郎の話は、今さら私が説明するのもおこがましいのですが、亀を助けて龍宮城に招待された太郎が村に帰った後玉手箱を開けると一気に老人になってしまうという物語です。龍宮城で夢のような生活を送っているうち、いつの間にか驚くほどの長い年月が過ぎてしまっていたのでしょうか。

 気付かないうちに驚くほどの期間が過ぎてしまっているということは、裁判でも起こり得ることです。

 例えば「貸した100万円を返せ」という裁判を起こしたとします。この場合相手が「いや、借りていない」と言って争ってきたとすれば…。

 裁判では「100万円が渡されたのかどうか」という点や「その100万円はどういうつもりで渡されたのか」という事について、書類や尋問等の証拠によって慎重に確定していかなければならないのです。

 複雑な事件なら、仮に勝訴判決を得たとしても、気付いたら3年も経っており、膨大な費用や労力を費やしていた…なんてことが起こり得るのです。

 普通の感覚からすれば「100万円を貸したか貸してないかということだけで、なんでそんなに時間がかかるんだ!」と思ってしまいます。

 長い年月が経ってしまっていたとしても、浦島太郎の場合には夢のような時間を過ごしていたわけですから、ある意味、仕方無いようにも思えます。一方で裁判の場合には、嫌な思いもするでしょうし、基本的には辛い時間を過ごさなければならないわけですから、気付いたら長い年月が過ぎていたなんてことは、できれば避けたいことです。

 ではどうすればいいのかという話なのですが、代表的な手段として「和解」という方法があります。

 例えば「100万円は諦めるから、せめて50万円はすぐに返して欲しい」という話を相手に提案します。お互いに少し歩み寄ることによりこのような合意が成立すれば、裁判を長引かせることなく、比較的短期間で争いを解決できることがあるのです。

 もっとも、「時間と労力がかかってもいいから、判決で決着をつけたい。」という方もいらっしゃることと思いますので、和解が必ずしも最良の選択とは言い切れません。

 このような場合に、弁護士の立場としては、浦島太郎化を避けるために和解を試みるか、浦島太郎になってでも裁判で徹底的に争うか、悩ましい問題です。依頼者の考えをよく伺って、その都度、より良い方策を一緒に決めさせていただければと考えております。



ー弁護士の徒然草ー

 大人になってから、あらためて童話や絵本を読み返してみると、子供の頃には思いもよらなかった色々な考え方が浮かんできてしまいます。

 浦島太郎を読み返してみても「夢のような生活を捨ててでも故郷の村に帰る浦島太郎の気持ち、わかるなあ」と感慨深い一方で…

 「これ、薬物中毒の話か?」とか「亀の野郎、人のことを一方的に連れ去っていい思いをさせておいて、最後に一気に現実に突き落とすなんて自分勝手なやつだ」なんてひねくれたことを考え、はたまた「太郎君、龍宮城で随分飲酒しているみたいだけど今何歳?」などと夢の無いことも考えてしまいます。

 …もう一度、素直な気持ちで読み直そうと思います!

弁護士 佐山洸二郎

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